日別アーカイブ: 2025年9月18日

「Z世代化する社会」を読んだ

船津昌平著「Z世代化する社会」を読んだ

Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち

本書の印象:偏見を覆す実情の描写

『Z世代化する社会: お客様になっていく若者たち』というタイトルを見ると、Z世代を批判的に扱った内容かと思われるかもしれない。実際、序盤の論調からもそのような印象を受ける部分もある。

しかし実際は、世間一般で語られるZ世代像と、著者が取材や体験を通じて知った実情との乖離を丁寧に描いている。そして、その背景にある大人たちの影響についても触れており、非常に読みやすく楽しめる内容だった。

「お客様になっていく」若者たち

この「お客様になっていく」という表現には、色々と考えさせられるものがある。

昔の体罰が当たり前だった学校時代と比べると、現在の学校はかなり生徒を「お客様」として扱っている。そうせざるを得ない社会の論調もある。そこで育った人たちが社会に出たとき、急に環境が変わるわけではない。

本来、会社組織では顧客の方を向くべき視線が、ともすると自社の社員に向いてしまいかねない状況が生まれる。こう考えると、なかなか厳しい現実が見えてくる。成長が見込める人とそうでない人との格差が、これまで以上に大きくなりそうで不安になる。

離職の理由:「不満」から「不安」へ

読んでいて特に興味深かったのが、離職・退職に関する話だ。本筋からは少し逸れるかもしれないが、個人的にはここが最も印象に残った。

従来の離職理由との違い

昔のように「ブラック企業だから辞める」「次のキャリアを目指すので転職する」というのであれば理解できるし、応援もしがいがある。しかし現在は、明確な不満もなく、次の目標も定まらないまま離職を考える人が増えている。

あえて理由を挙げるとすれば、「ホワイト過ぎる職場で、このままでいいのだろうか?」という漠然とした不安。そしてその不安を巧みに突いてくる転職エージェントに後押しされる構図が見え隠れしている。

「不安」への対策の難しさ

この「不満」ではなく「不安」という指摘には、なるほどと思わされた。確かに企業が行う離職対策の多くは「不満」に焦点を当てたものばかりで、「不安」に対応したものは少ないように感じる。

しかし、変化の激しい現代において、先を保証できるものなど存在しない。多くの人が変わり続けることで不安から逃れようとしている。いや、不安だからこそ変わり続けるという形になっているのではないだろうか。

そうなると、不安に対する対策として何ができるのか。一緒に考えることぐらいしか思いつかず、やはり対話が重要になってくるのだろうと考えさせられた。

まとめ

本書は、表面的なZ世代論を超えて、現代社会の構造的な問題を浮き彫りにしている。「お客様化」や「不安による離職」といった現象の背景を理解することで、世代論を越えた社会全体の課題が見えてくる貴重な一冊だった。