宿輪先生の新著「通貨経済学入門」を読んだ
直前に読んだハーバードの「世界を動かす授業」が経済状態を政治に絡ませて説明していたのに対して、本著は通貨というものに対して昇天を当てて世界経済を見ている。
ただ、読み物と言うよりはどちらかというとやっぱり通貨経済に対する”教科書”の色が強いように感じる。そういう意味では教科書が苦手な私には序盤が読むのが大変だった。しかし、終盤に行くにつれ前半の内容理解も進んでいき、最終的にはなかなか面白く読むことができたと思っている。苦手意識を持っているのでちょっと意外だった。
通貨制度に対しての理解度
通貨制度という点において、「変動相場制」だとか「固定相場制」という言葉はもちろん知っているし、基本的な変動相場のメカニズムに関しても理解しているつもりだ。
ただ、実際のところ貿易においてどうお金が流れているのか。それが固定相場の場合は?という風に考えてみると、結構わかってないことが分かった。ううん、ちょっとがっかりだ。
たとえばものを輸出した場合。取引をドル建てで行うのであれば企業はものと引き換えにドルを得る。最終的には円に両替することになるわけで、ドルが売られて円が買われる。つまりその分円高になる。変動相場に対してはたぶん大丈夫。
これを固定相場に置き換えた場合がイマイチピンとこない。固定相場においての相場は通貨当局によって固定されている。つまり、企業が得た外貨は市場ではなくて通貨当局に両替してもらうことになるのかな。つまりは、輸入>輸出の関係が成り立っている場合には通貨当局の外貨準備は増えていくことになる。外貨準備が増えていくってことは、それ相応の国内通貨を供給したということになる。その場合、国内の通貨供給量の総量が増えることになるので国内経済はインフレに向かいやすくなってしまう。逆のケースで考えると、保有している外貨準備が底をついた段階で両替が不可能になってしまう。それを起こさないためには、金利をあげ、外からの通貨への”入り”を増やして手に入れる必要が出てくる。
うーん、固定相場は単純に”固定”だから単純じゃーんって思っていたけど、ほとんどが知らない内容だった。しかもそれを説明しようとすると大変だ。
経常収支
本書では通貨危機の発生原因の一つとして通貨のファンダメンタルズというものを取り上げている。ファンダメンタルズの構成要素として出されているのが
- 経常収支
- インフレ率
- 経済成長率
- 財政収支
- 相場の予想
としている。注目は経常収支の中でも貿易収支であったのが、昨今は投資に対しての収支を注目・・・と。
イマイチピンとこなかったので、調べてみた。財務省と日銀が出している国際収支統計というものに、経常収支が載っているようだ。ちなみに国際収支統計はWikipediaによると
国際収支統計
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%8E%E6%94%AF%E7%B5%B1%E8%A8%88一定期間における国(またはそれに準ずる地域)の対外経済取引(財・サービス・所得の取引、対外資産・負債の増減に関する取引、移転取引)を記録した統計である。大まかに経常収支、資本収支、外貨準備増減の3つに分けられ、またその中でさらに細分化される。
経常収支の中には投資に対するものと言うのは所得収支がある。ただ、国際収支統計にある経常収支と並んで報告されている資本収支というものもある。この二つの関係性がよくわからない。文言だけを見る限りだと、結構被っていそうな印象を受ける。
というか、「経常収支」「国際収支」「国債収支」「投資収支」なんたらかんたら・・・
ああああーー(頭をかきむしる)
こういう言葉。普段から知っておけよ!という言葉もあれば初耳な言葉もいくつかあって頭の中でゴチャゴチャしてくる。物覚えの悪い私にはやっぱり教科書は大変だ。
ちょっと区分けしてみよう
以前読んだ「ハーバードの世界を動かす授業」では世界をいくつかの国々に分割して考えていた。そこで分割された国々に、通貨と言う視点を加えてみたらどうなるだろうか。P.82に掲載されている表2-1-1に基づいてやってみた
区分け | 国・地域 | 通貨制度 |
高度成長のアジア | シンガポール | 管理変動相場制 |
中国 | アジャスタブル・ペッグ制 | |
香港 | カレンシーボード制 | |
インド | 管理変動相場制 | |
資源に依存する国々 | サウジアラビア | 伝統的固定相場制 |
ロシア | その他の固定相場制 | |
狭まって身動きが取れない国々 | メキシコ | 管理変動相場制 |
南アフリカ共和国 | 管理変動相場制 | |
欧州連合 | EU | 自由変動相場制 |
巨大債務に悩む富裕国 | 日本 | 自由変動相場制 |
アメリカ | 自由変動相場制 |
こうしてみると、やはり資源国や発展途上のアジアに関して言うと何かしらの政府の関与が色濃く、そのフェーズを越えたと思われる国々は変動相場を採用しているように見える。すでに、政府側で相場を固定にするメリットが薄くなってしまったということだろうか。
やってみたものの、それなりに予想通りではあったのでなんとも。もう少し違う視点をつけるには知識が足りないな。
それにしても
株だとか日経新聞だとかを読んだりしている割に、未だに基本的なことがあれこれと理解していないんだなとつくづく実感してしまうのが正直なところですね。
それでも、これまで宿輪ゼミでチンプンカンプンだったコルレス銀行の話も出てきてようやく少しわかったり、その他いくつかの気付きを得ることができた。
経済って、すごい身近にある話にもかかわらずあまり意識されない。どこか、他人事のように扱われている気がする。もちろん、景気動向のようなものに対しては結構敏感なんだけど、それでも発想は”円高・円安”、”失業率”くらいではないだろうか。
これら知識を知ることによって、景気が良くなるわけではない。
ただ、今何が起きているのか。この先何が起きればどういうことになるだろうかという予測を立てることは人生設計において大事な内容だと思う。
もちろん、知識は使ってこそ。どう生かすかは自分次第だ