冨山和彦著「ホワイトカラー消滅」を読んだ

ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか (NHK出版新書)
いつもVoicyで聞いている元Mixi社長の朝倉祐介氏が、ちょくちょくと紹介している本書。ようやく手にとって読み終えました。
タイトルからは悲観的な印象を受けるかもしれませんが、実際には日本の労働市場における構造転換の必然性と、そこに潜む新たな可能性が書かれており、示唆に富んだ一冊でした。
途中何度となく考えさせられてしまったので読むのに時間がかかりました。
本書の核心は、今現在日本が抱えている少尉高齢化やAI時代において、労働の質的変化がどのように起こっていくのか。そしてその背景の中で何に力を入れていくべきなのか。
著者の考えが記されています。
ここ数年の生成AIを中心としたホワイトカラー労働の変化は激しく、明らかにゲームが変わってきている。
ただ、自分自身を振り返ってみても、変わり始めているゲームのルールに対して、旧来のプレイの仕方しかしていないのではないか。考えさせられます。
変わったゲームの下で世の中がどう変わっていくのか。
著者が描いているような未来になっていくのかどうかは正直わからないですし、集住という方策が現実的に実施されるということは、効率面では理解できるものん感情面では難しいと思ってしまう自分もいます。
ただ、少子化が続いていった先の未来として、そんな感情論なんて通じない状態になっているかもしれない。著者が示すように、アドバンストな「エッセンシャルワーカー」という形が取られるのかもしれない。
医療、介護、交通、インフラ、物流など、社会の基盤を支える職種が、これからの中産階級の担い手となるという展望は、特に注目に値します。
また、地域経済の文脈で興味深かったのは、高付加価値型の観光業への言及です。日本の強みである文化遺産、自然、「食」を活かした観光業の可能性を指摘し、特にブランディング戦略としての「キープ・マーケット・ハングリー」の考え方は示唆に富んでいます。
本書の主張で特に重要だと感じたのは、付加価値労働生産性の向上が全ての解決策の核心にあるという点です。人手不足時代において、低労働生産性モデルは必然的に衰退する運命にあり、産業構造の転換は避けられないというメッセージは説得力がるように感じました。
総じて、本書は日本の労働市場が直面する構造的な課題と、そこからの打開策を明確に示した良書といえます。特に、悲観論に終始せず、新たな可能性を具体的に提示している点は高く評価できます。AIの台頭を必然として受け入れつつ、そこから生まれる新たな機会を捉えようとする姿勢は、これからの時代を生きる私たちにとって重要な示唆となるでしょう。
